世界が注目する若き政治家③
鈴木邦和(29):東京大学工学部卒。在学中の東大ドリームネット(在学生と卒業生の600人規模の交流会開催等を行う大学公認団体)代表、震災復興支援団体”UT-AId”創設(のちに東京大学総長賞団体受賞)、投票マッチングサービス「日本政治.com」立ち上げ(世界的経済誌Forbesが選ぶ30人の30歳以下若手リーダー"30 Under 30 in Asia"選出)を経て、2016年に東京都議会議員に選出(男性最年少)。将棋四段(高校時代に三度全国大会に出場)。World Economic Forum(ダボス会議)Global Shapersメンバー。

野村:まさに、本当はそういうスタイルの方が、ロジなどを担ってくれる人たちのオーナーシップも芽生えてくのだと思います。突き詰めると、「ビジョン」と「リスクヘッジしてもらえているという安心感」の2つの提供。
鈴木:と言いつつ、ドリームネットでの活動はもっとブレイクスルーを起こせたはずだという想いも残りました。この想いは、東日本大震災後の復興支援活動にも繋がっていきます。
野村:UT-Aid(東大の学生・OBOG有志が立ち上げた復興支援組織。のべ2100人を被災地に送り現地支援。のちに東大総長賞団体受賞)ですね。これは邦和さんが立ち上げられたのですか?
鈴木:とあるOBの方と僕との「何かできることはないか」という話から始まり、ドリームネットや三四郎会の皆さんの協力を経て徐々に活動が拡大していきました。学生団体に多い話ですが、ドリームネットはミーティングが相当頻度であるものの、なかなか物事が決まったり進んだりしませんでした。その点、UT-Aidは年間の会議も4回ほど、あとは資金繰りと現地を含むオペレーションの改善に注力し、ドリームネットに比しても集中的に自分のバリューを出せたました。
また、ドリームネットの活動はどうしても学内完結的なものでしたが、UT-Aidの活動は学内を超えたもので、実際に学外からも多くの支援・参加者が集まってくれました。自分に特殊なスキルがあったわけではないのですが、構想を打ち立てて、そこに人やお金が集まってくれた。この経験で、joinできる仕組みを作れば色々なものが集まってくれるという実感を得られ、続く起業(投票マッチングサービス「日本政治.com」立ち上げ)に繋がっていきました。「自分は理系で、政治のことは何も知らないから」といったストッパーが掛からず、時代・社会が必要とするものを提示すれば、色々なものがあとから付いてきてくれるだろうと。

野村:これもすごくいいお話です。自己肯定といったフェーズを越えて、社会的・時代的要請に応えるという覚悟と実感。こういう話を聞くと、僕も起業したくなってきます(笑)。
ちなみに、こういった活動の傍ら、勉学はどのように取り組まれていましたか?
鈴木:僕の専門は工学の光造形分野でした。3Dプリンターが一般化してきていますが、熱による造形だと、素材が延焼してしまうためミクロン単位より小さいものが作れません。こういった課題について、バイオミメティクス(生物の構造や機能を模倣して技術として活用するアプローチ)分野で研究を重ね、連名ながら特許も取得できました。
野村:連名とはいえ学部生で特許とった人に初めて会いました(笑)。
投票マッチングサービス「日本政治.com」はどのような経緯で始められたのですか?
鈴木:当時はクリアに言語化・構造化ができていなかったのですが、震災復興支援で感じた矛盾を解決するために何かを作りたい、という想いだけが先立っていました。社会的にもNPOや一般社団法人の活動を通して現場の課題を解決しようという気運が拡大していましたが、その一方で、やはり現場における行政の大きさを痛感しもしました。市民が行政に何を求めるか、行政が市民に何を提供できるのか、この双方を可視化がすることが大事であって、その根本が選挙に他ならないだろうと思い到り、投票マッチングサービス「日本政治.com」を立ち上げました。2012年11月に公開し、同年12月に衆院選があったのですが、政党が乱立していて投票先に思い悩んでいた人も多かったからか、ユニークユーザーは50万人を超えました。広告費も一切かけていなくて、FBでシェアした程度だったので驚きました(笑)。
野村:まさに、時代的・社会的要請に応えた形ですね。
小池知事主宰の「希望の塾」に入塾されたのはしばらく先ですか?
鈴木:2016年の秋です。その頃には「日本政治.com」に限界を感じていました。当時の自分には、事業化する能力もビジョンも圧倒的に足りていなかった。行政や政治の中にいないと分からない世界があるということに想像力が及んでおらず、いわば外から見た正論で組み立ててしまっていました。次のサービス、アプリも思い浮かばない中、希望の塾に入ってみて、実際に区議や市議、公務員といったパブリックセクターで働く人たちと触れ合う中で、色々な視点が得られ、やはり自分で政治に飛び込んでみようと決心しました。
野村:内部の事情を知らないからこそのアプローチもあるのだと思いますが、言葉を選ばず言えば、政治は一般に民意と呼ばれるものだけに支えられているわけではないのが実情です。政治という世界が別個に存在しているというようなものでしょうか。個人や民間ではなかなかアプローチできない世界があるという実感値に立って、内情を理解しよう、中から変えてやろうと思って政治に出る人がもっと増えていってほしいと感じます。
鈴木:あれ?のむちゃんは?(笑)