世界が期待する若き政治家①

鈴木邦和(29):東京大学工学部卒。在学中の東大ドリームネット(在学生と卒業生の600人規模の交流会開催等を行う大学公認団体)代表、震災復興支援団体”UT-AId”創設(のちに東京大学総長賞団体受賞)、投票マッチングサービス「日本政治.com」立ち上げ(世界的経済誌Forbesが選ぶ30人の30歳以下若手リーダー"30 Under 30 in Asia"選出)を経て、2016年に東京都議会議員に選出(男性最年少)。将棋四段(高校時代に三度全国大会に出場)。World Economic Forum(ダボス会議)Global Shapersメンバー。

野村:邦和さんと言えば将棋、といったイメージがありますので、今日はここから深めていけたらと考えています。将棋に没頭していったのはいつ頃からですか?

 

鈴木:父が将棋の段保有者だったこともあって中学時代もよく指していたのですが、高校受験を終えてから結果発表までの手持ち無沙汰な時期に家にあった将棋の本を読み始め、はまってしまいました。そのまま高校で将棋部に入って、通学中、朝練、放課後の部活で夜20時、帰宅してまた将棋、みたいな生活を送ることに(笑)。

 

野村:将棋部で朝練とは未知の世界です(笑)。ご自身ではお話しづらいかと思いますが、戦績といいますか、どの程度のレベルまでいかれましたか?

 

鈴木:県内のそれなりの実力者が集まって、優勝者が三段に昇段する「三段戦」なるものがあり、それで優勝もしました。三段は高校の部活で県大会優勝レベルをイメージしてもらえると丁度いいと思います。一方で、小学生時点で五段のプロという人たちがいる世界なので、決して威張れるものではありません(笑)。高校将棋界では、入部から3年で三段というのは珍しい例ではありましたが、環境次第では4、5段まで行けそうな実感はありました。

全国大会にも成人を含むものを含めて三度出場させてもらいましたが、局面によって発揮できる力も結果も大きく違いました。将棋には100以上の戦法があるのですが、普段指すのは10名程度。高校生活終盤にネット将棋が流行り始めて、本当に色々な人と打てるということに感動しつつ、環境要因というものの大きさを実感し、東大将棋部に入りたい一心で受験勉強に臨みました。

 

野村:僕の剣道での経験もそうなんですが、ある意味、自分の限界に挫折するというより、「まだやれた」と思える状態で一旦は幕を引けた、それもその先に東大受験という機会を得られたことは、本当に幸運だったと感じます。ある意味で高慢ですが、一つの世界で真髄を、本当に少しだけですが、垣間見たというか。

 

鈴木:同意です。ただ、僕の場合は東大将棋部でも挫折を経験しました。才能の差を感じたというのもありますが、言葉を選ばず言えば、彼らは狂気の世界に生きていました。僕も高校時代は1日8時間以上没頭していましたが、彼らは文字通り1日中。また、大学では将棋以外の色々なことを経験したいと思うようにもなっていた部分もあり、間もなく退部を決断しました。

 

野村:よくわかります。同級生に一族が東大名誉教授らしい人がいたのですが、図書館で呼吸をするようにテクストを読み耽っていて。僕は学問関心も強かったし集中力や要領にも一定の自信があったのですが、勝負にならないというか、世界が違うと(笑)。

ちなみに、将棋は実力がそのまま毎回の手合いの結果に直結するものなのでしょうか?

 

鈴木:三段と二段が対局すれば、20回に19回は三段が勝つ世界です。

 

野村:すごい世界ですね。あと、将棋は負けた理由が都度明確に分析・理解できそうな印象です。

 

鈴木:そのとおりです。PDCAを明確に回せるのが快感でした(笑)

 

野村:将棋にフィットしていた考え方や思考回路はどうやって形作られたものだとお考えですか?

僕の例を挙げると、発話が遅く、診断は受けてないものの発達障害のスペクトラムに引っ掛かる何かがあったのだろうと思っています。一方で音感が強かったので、九九をすぐに覚えてしまい、そこから算数に強くなってロジックが強化されていった。あとは児童会の活動でスローガンを作るときに、顧問の先生が徹底的に付き合ってくれて。ワーディング、抽象概念の取扱い、全体感の把握、人前で話す、といったところはこの経験が大きかったという理解です。あとはやはり剣道。今回のこの企画の直前に電車で考えただけなんですけど(笑)

鈴木:すごく面白いですね。のむちゃんを知っている身としても今の話はとてもしっくりきます。脱線しますが、のむちゃんの知的瞬発力は驚異的で、0.1秒未満の勝負たる剣道の性質に近い印象を受けます。将棋は対照的に、じっくりと全体感を踏まえて思考していきます。

 

野村:たしかに、邦和さんは思考速度もとんでもなく早いですが、僕の思考スタイルと結構対照的で、それは奇しくも剣道と将棋という対比に近いかもしれません

 

鈴木:自分の話をすると、根幹にある考え方は、「将棋は対話」だということです。相手の意図を汲み取って、自分の意図をどう残すか。指していると、相手の性格や思考の仕方まで見えてきます。換言すれば、相手をリスペクトした上で対話ができないと、まず強くなれません。

 

野村:剣道も全く同様です。自分が打ちたい/打たれたくないと思っていると同時に、相手も打ちたい/打たれたくないと思っている。語弊を承知で言えば、一定程度を超えてくると、竹刀を振った数だけでは強くなれないというか、逆に言うと基本技が身についていれば、剣道を離れた人間的成熟と言いますか、おそれを超えるとか、相手を理解し存在を引き出す、無心とか、そういう境地に近付くにつれて、練習頻度が下がってもいい剣道ができるようになります。

邦和さんの対話能力はどこに由来するものとお考えでしょうか?