野村将揮
無題
更新日:2018年10月31日
高校受験を間近に控えた時分、冬場に外出するにつけて、どうにも背中が痒くて痒くて仕方が無かった。受験を控えて、記憶も定かならぬ程にひたすら机に向かう日々。アレルギーなのかストレスなのかも分からず、幾度と無く学校を早退し、発狂しそうになりながら自宅で呻き続けていた。
ある日、何となしに、風呂のときにいつもとは真逆、頭をさきに、あとに身体を洗ってみた。はたと痒みは無くなった。坊主頭が伸び始めて調度良い短髪になっていた頃のこと、母親が使っていたリンスだかトリートメントだかを(無断で拝借して)真似て使い始め、適量というものを一切弁えずに塗りたくる。洗い流すにあたって全身の毛穴にそれらが付着し気孔を塞ぐ。さぁ勉強だと外に出るにつけて、肌が乾燥して、尋常でない痒みを誘発していたようだった。
先刻、リンスだかトリートメントだかも分からぬ試供品を風呂場にひっくり返して散乱させた。一応のこと流しはしたのだが、風呂を出てからというもの、足の裏が痒くて仕方がない。風呂場に戻り、床を擦り洗いして、足の裏を洗い直す。歳を重ねるというのはこういうことにほかならないのだろう。背中の小さな発疹は、自分で確認することなど叶いはしないが、大分小さくなったようではある。