野村将揮
郷里にて。
更新日:2018年10月31日
地元に帰り、中学と高校の校長先生と、部活動の顧問の先生とに挨拶に伺った。
彼らは今や紛れも無く、ただの大人でしかなかった。
その言葉は、式辞や校報のそれとはまるで違っていて、駅前の居酒屋で交錯する類の、ありふれたそれでしかなかった。
身長は自分と変わらず、歩調は大袈裟にさえ思われてしまうほどひどくゆったりとしていた。実家の祖父を彷彿させる安心感。
眼光は濁ることなく、だが、目尻は下がっていた。白くなりつつある眉は、人を叱るでも褒めるでもなく、やさしさというかうれしさというか、何かそういうものを滲ませていた。
人格の涵養を支えてきてくれたのは、ただの大人たちだった。彼らは今や紛れも無く、ただの大人でしかなかった。
本当に立派な、ただの大人たちだった。