人を楽しませるということ:
ジャグリング世界一コピーライターの​視座④

長竹慶祥(27):

国立筑波大学附属高校在学中にジャグリング世界大会Jr.部門で優勝。慶應義塾大学総合政策学部、在学中の米国での大道芸武者修行を経て、博報堂入社。社内適性試験で首位となりクリエイティブ部門に配属、コピーライターに。海外大会で入賞経験もあるポーカープレーヤーでもある。

長竹:一言で言うとタフネスです。最初の数年間は一人の先輩に付いてほぼマンツーマンの師弟関係的に鍛えられるので、仕事の内外を問わず、いかに期待を超えていけるかが重要でした。相当な無茶振りにも答えてきましたが(笑)、4年目ぐらいから少しずつ自分で仕事に取り組むようになってくると、だいぶ責任感が付いていたのだとも感じました。その頃には自分のスタイルも見えてきて、僕は左脳で理知的に詰めるというよりも、言わば軽快に既存のものも利用する、合気道のようなものなのだなぁと。

 

野村:12月にWEBで話題になった「カップヌードル謎肉祭・謎肉丼」もまさにそれですね。ああいうお茶目さは個人的にもすごく好きです。

 

長竹:ちなみに、野村くんにこそ聞きたいんですが、広告の未来はどうなっていくと思いますか?

 

野村:難しいですね。前提として、本当にいいものを作っている人たちのこだわりの総量が社会全体としては増えてきていて、また、そのこだわりを理解できるのはいいことだという社会的了解が強化されてきているように感じています。

ただ一方で僕は、こだわる人の数も、そのこだわりを好む人の数も、劇的に増えることはないのではないかとも思っています。コピーに芸術性や鮮やかさを求めるのもいいのですが、それを自己目的化しても仕方がない。糸井重里あたりはやはりすごいのですが。
そういったこだわりに対する感度、悪く言えばリテラシーや関心が高くない人にどうアプローチするのかを考えたときに、経営的には、60点や70点でいいから早く広告作品を作ってもらうことへのニーズが増えていくのかもしれません。

 

長竹:なるほど、すごく興味深いです。

 

野村:なぜこの話をしているかというと、物流と通信が変わると広告の概念が変わっていくのだろうと漠然と感じているためです。5G、ドローン、自動運転が社会実装されると、結局はAmazonのような主体が拡張した世界になるだろうと。購買導線ド真ん中で50点ぐらいのコピーを乱発していけば売り上げが伸びる世界になっていくのかもしれないなぁと。

 

長竹:そう思います。いわゆるヤンキーのお兄ちゃんに、パッと見ただけでわかってもらえるか、共感してもらえるか。高尚なコピーが95点だったとしても、売り上げが伸びなければ評価のしようも無いわけで。もちろん売り上げは一例でしかなくて、ブランディング目的の場合はまた別の評価軸が出てくるわけですが、いずれにしても目的を達成しているのか、課題を解決しているのかというところが重要だと思います。

野村:僕の地元の友人たちは、初任給日に休みを取ってパチンコに行っている人がばかりでした。こういう人たちに刺さるコピーを日常生活であまり見ないというのが正直な感想です。

 

長竹:悲しい話でもあります。実際、広告以外のコンテンツが溢れすぎている。

少し話が逸れますが、いまの子どもたちはテレビを見ていても、CMがなんなのか分からなくなっていると聞きます。Netflixなどには長い広告はないし、Youtubeでもスキップできるので、もうCMとはなんぞ、と。

 

野村:なるほど。CMという概念も分からないし、何を目的として、何を伝えたくて作られているのかが全然わからないCMも増えている。えっ、これ車のcmだったの?みたいな。

 

長竹:最近増えているタクシー車内の動画広告は、構成がほとんど全て一緒なんですね。もちろん、媒体の特性を踏まえたものだと思うのですが、今の子どもたちを対象層としていくと、同様の画一化、フォーマット化が進んでいくんだろうなと。

 

野村:また、これは釈迦に説法ですが、本当にリアルなデータをきちんと分析した上で打たれている広告が意外に少ない気がしています。耐久消費財より非耐久消費財、消耗品。

 

長竹:そうですね。データだデータだと言いつつ、きちんと分析しないままに広告を作っている人も多い印象です。

 

野村:あとは、僕の高校の先輩にあたるそうなのですが、高木新平さんみたいな人がどれだけ出てくるかというのも関心があります。政治などの分野で広告業界OBOGが活躍すると、また面白くなるだろうなぁと。

 

長竹:博報堂のOBOGは、社外に出ても勢いのある人が多いです。競合他社は小会社を任せることも多いと聞きますが。

 

野村:僕も遠からず本を出せたらと考えているので、その際にはぜひご助力ください。本日はどうもありがとうございました。【了】冒頭に戻る