人を楽しませるということ:
ジャグリング世界一コピーライターの​視座③

長竹慶祥(27):

国立筑波大学附属高校在学中にジャグリング世界大会Jr.部門で優勝。慶應義塾大学総合政策学部、在学中の米国での大道芸武者修行を経て、博報堂入社。社内適性試験で首位となりクリエイティブ部門に配属、コピーライターに。海外大会で入賞経験もあるポーカープレーヤーでもある。

長竹:すごくいい質問です。それまではともかくジャグリングが楽しかったのですが、世界大会で優勝してからは、いわばツールになりました。お客さんをどう楽しませるかというところに主眼を置くようになった。これは大きなターニングポイントで、人をどう楽しませるかを考えた末、じゃあジャグリング以外の手段でもいいんじゃないか?と。広告業界に行くに至った理由の一つです。

 

野村:なるほど。僕らが出会った頃にはそんなことを考えていたのですね。ところで、そもそも僕らたちはどういう経緯で知り合ったんでしたっけ?

 

長竹:大学生のロールモデルを紹介する雑誌があって、その集まりS君(野村の大学の同期で、現在Harvard Business School在学中)と僕が出会い、そこから3人で飲むようになりました。

 

野村:僕は根本的には根暗で出不精なので、誰かに人を紹介されるときも断ることが多いのですが、めちゃくちゃいい意味で、年に何度か会うという関係が10年弱続いているのは本当にうれしいです。僕らの年代になると、就職、転職、留学、出産を経て、表面上の関係が薄れていく。

 

長竹:僕も男友達とわざわざ2人で会うことがあまり無いので貴重な存在です。

 

野村:大学時代はどのように過ごされていましたか?

 

長竹:広告コンテストに出て優勝したり、外資系企業が運営するクリエイティブスクールに通ったりもしていました。途中、休学してロサンゼルスで大道芸の武者修行も。就活では博報堂のみを受けて、無事入社に至りました。

 

野村:広告は今も当時もすごく狭き門という印象です。

 

長竹:採用が130人程度で、倍率は100倍程度だと思います。配属は入社後の社内適性試験の結果次第で決まるのですが、幸運にも1位を取れて、希望していたクリエイティブ部門に配属されました。

 

野村:どんな試験で、どんな回答をされたのですか?

 

長竹:座学を踏まえた筆記試験もあるのですが、最終試験はアイデアに基づくプレゼンでした。そのときのお題は「人と一緒にいるときにスマホを使わせないアイデアを考案せよ」。

それで、同期のみんなは、たとえばアプリを作ってしばらく使わないとポイントが貯まる、みたいな発想に向かっていたのですが、僕はまずお題自体を疑いました。すなわち、「そもそもなぜ人と一緒にいるときにスマホを使ってはいけないのか」。そして、スマホを使っていることが問題なのではなく、注意が相手に向かっていないことが問題だと再定義した。課題の再定義をしている人はほとんどいなかったと思います。そして、この再定義した問題を解決するに当たって、どこでも、お金をかけず、簡単に実施できる必要がある。

ということで僕は、「一本のペンを使います」というプレゼンで、ペンで鼻の下に鼻毛を書く、という打ち手を提案しました。プレゼン中も実際に自分に鼻毛を書いて、終わりに「なぜかみなさん僕のことずっと見てますよね?」と。大爆笑、大喝采(笑)。自由で寛容な会社だと思いました。

 

野村:素晴らしい。問題の再定義まではできる自信があります。汎用性の話も考えられる。ただ、鼻毛まではまずいかない(笑)。このセンスがコピーライティングに生きているのですね。

 

長竹:いまも、コピーが書けることが重要なのではない、と常々感じています。言葉は最小単位の企画である、と言った人がいますが、いい映像も絵も言葉にできる。今の時代にコピーなんて、という人もいるのですが、僕はやはり言葉だと思う。

 

野村:就活生にアドバイスを求められたときによく話すのですが、たとえば3人の面接官と会う場合に、全員が同様の言葉で君を形容すれば、まずは受かる。その形容を洗練させていくように、と。結局のところ人は、動画も絵も目の前の相手も、言語で把捉して解釈する。

 

長竹:よくわかります。僕も就活生から相談受けた際に、色々と話を聞いたあとにふと大学で何の研究をしているのか聞いたら、「カラスの脳みそを輪切りにしてます」って。はっ?!みたいな(笑)

 

野村:めちゃくちゃ面白い(笑)

 

長竹:それだよ!って。今まで僕に話したことは全て捨てて、あらゆる面接で、そのことだけを話すように、と。広告の未来とか一言も話さなくていい、と。結果、競合に行ってしまいました(笑)

 

野村:もうワーディングが強力過ぎてやばい(笑)。カラス、脳みそ、輪切り(笑)。

自分が伝えたい自分と、相手が興味を持つ自分とには、隔たりがあるということを前提できるかどうか。その違いに意識的であれるかどうか。これは業界問わず重要な点だと思います。

ちなみに、入社1-3年目あたりではどういったスキルセット・マインドセットが身に付きましたか?