「最強キャリア」の先に
追い求めるもの④
京極淳(31):智弁和歌山高校在学中の東大受験生向け全国模試で1位、センター本試験文系全国1位(得点率97.6%、予備校調査)を経て東京大学文科一類に入学。在学中に米国ハーバード大学との学際交流プログラムHCAPの東京大学支部を創設し、1期代表に(当該団体のAlumni組織はのちに東大総長賞を受賞)。同法学部卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、現在は外資系投資ファンドにてヴァイス・プレジデントを務める。

京極:マッキンゼーの最初の3年間程度は、基礎スキルを体得する期間だと考えています。使い古された表現ではありますが、ロジカルシンキングとは何か、問題解決の手法とは、といったことを様々な角度から叩き込まれます。それ以降はマネージャーとしてチームを動かすことを学び、さらに先にはパートナーとしてクライアントとの関係構築・維持を担いつつ、業界レベルの専門性を高めていくイメージです。
僕はアソシエイトのときに転職したのですが、やはり今振り返ってもマッキンゼーの人材育成システムは本当によく出来ており、あの3年間で培った基礎は大きな糧となっています。もう一度新卒入社先を自由に選んでいいよと言われてもマッキンゼーを選ぶと思います。
一方、コンサルティングという仕事の性質と若手であったことから、どうしても、各プロジェクトの範囲でイシューを切り出して最適解を提示する、ということに目が向きがちだったということもあって、3年が経過した頃、会社全体を見られるような仕事をしたいと思い至り、現職に移りました。
野村:僕もよく分かっていないのですが、京極さんがお勤めの外資系投資ファンドは、相当に少数精鋭だと聞いています。
京極:人数はかなり少ないですが、今まで日本だけでも数千億円単位での投資実績があります。元々、投資の実行からExitまで一貫して案件に関わりたいと思っていたことと合わせて、今の会社に移ろうと決めました。
野村:マッキンゼーと現職を俯瞰されて、大学生当時から一貫しているキャリア観などはおありでしょうか?
京極:やはりHCAPでの経験は根幹をなしていると感じます。一緒にいて楽しい、尊敬できる友人たちと一緒に何かをやるとき、自分も、自分にしかない価値を提供できるようになっていたい。皆それぞれの分野で第一線級の人物になっていると確信しているので。
また、僕の根本思想は「やりたいことを自由にやりたい」ということに尽きており、この障壁を取り除けるような戦略をキャリアとしても重ねているつもりです。運がよかっただけなのかもしれませんが、実はいまの仕事はすでに自己実現のイメージに近くて、大きな裁量のもとで自由にやらせてもらえています。
野村:誰もが京極さんのような実績やキャリアを積めるとは思わないものの、京極さんがおっしゃるような「自由」が職場はじめ社会の様々な場で志向されるようになれば、各個人や各組織のパフォーマンスが上がっていくように思います。さらに根本の議論としては、自己理解を深める教育だとか就活システムだとか、構造的なところに帰結していくだろうと思いつつ。
キャリア観をうかがいましたので、この流れで結婚観も教えてください(笑)。
京極:急だな(笑)。真面目に回答すると、必要条件は過去の経験から分かるのかもしれませんが、十分条件は分からないと思います。その上で話すと、やはりお互いの考えを理解できるというのは重要です。もちろん、その前段階に「理解したいと思える」ということがあります。あとは、せめて一つは趣味を共有していること。
野村:「理解する」にあたって、意識・努力するというフェーズが必要か不要かは、結構核心だと感じています。お互いが相手に合わせることなく、いわば自然に共有できる、いや共有されている、という状態。
京極:ちなみに、野村君は何をモチベーションにこれ(「若者の哲学」)をやっているんですか?先立って他の人との対談も読みましたが、熱量が想定を遥かに超えていて驚嘆しました(笑)。
野村:お話聞くのに3時間、文字起こしに2時間 、構成や微修正に2時間、さらに本人確認といった感じで、お一人当たり10時間弱は費やしますね。
やっぱり僕、すごい人のすごい才能に触れるとハッピーというか、感動するんですよね。単純に面白いというか、テンションが上がるというか、あまり論理的に突き詰めてもいなければ言語化も避けているのですが。そういった人間関係を拡大していくと自分の人生が豊かになっていくと思いますし、究極的には、こういう趣味のような何かで生活の糧が得られるようになれば最高ですね。今は敢えて「趣味」として完結させていますが、以前友人に「多くの人が苦に感じることを、全く苦に感じることなくやれるなら、それは才能と呼べるだろう」と言われたことがあり、それもそうなのかなと。
京極:すごいですね。でも趣味なら釣りも行きましょう。釣りも本当に性格が出ます。釣れない時にどういう反応するか。釣れないときが一番おもしろいです。
野村:ようやく誘ってもらえました(笑)。ぜひご一緒させてください。本日はどうもありがとうございました。【了】冒頭に戻る