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自治体から時代を進める
〜全国最年少副市長の挑戦〜⑤

毛塚幹人(27):

宇都宮大学教育学部附属中学、宇都宮高校、東京大学法学部を経て財務省入省。G20関連業務、近畿財務局出向、税制改正関連業務に携わったのち、つくば市副市長に就任、全国最年少副市長となる。"アジャイル行政"のコンセプトの下、全国各自治体のモデルとなる取組を多数推進している。

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つくば市の地域の祭にて

毛塚:うーん、みんなで何かをやるのは好きです。自分たちが時代を作っているという感覚を持ちながらひとりではやれないことをやっていく。

僕自身は行政のアップデートをしたいと思ってきましたし、いまはそれを実行しやすい立場に置いてもらえています。僕たちの同世代には各界のイノベーターも生まれつつあって、僕は彼らほど尖ってはいないのですが、数少ない行政の人間として、世の中を変え得るポジションを与えてもらっているという感謝と自覚はあります。これからも最先端にいて、結果を出し続けたい。これが続いていくと、人生楽しいだろうなぁと感じています。

 

野村:それを楽しいと思い始めたのはいつごろからでしょうか?

 

毛塚:副市長として、本当に少しずつですが、成果が目に見えるようになってきたころからです。市長がCEOなら、副市長はCOO、といった役割分担だと考えています。市長がビジョンを掲げて、副市長がアイデアのたたき台を作ったり、執行にあたって役所内や地域との調整を担ったりする。

外部との多様な連携を実現するための工夫も色々しています。具体例を挙げると、もともと財務省にいたということもあって、予算の拠出の仕方もこだわっています。たとえば、いま進めている先端技術の社会実装プロジェクトもでも、企業等との連携が決まってから予算を組むのではなく、予算を先に措置して、連携が決まり次第いつでも出せる状態にしています。一方で、こういった柔軟な取組にこそ正当性が必要なので、採択にあたっては公開での専門家の評価と市民のアンケートを実施しています。アジャイルな行政において、具体のオペレーションの工夫は本当に重要です。

野村:とても重要な話だと思います。言われてみれば当然といった世界を、具体の人間関係も含めて調整していかなければならない。

 

毛塚:つくば市役所の職員数は1800人。巨大組織ではないけれど、全員を理解するのは少し難しい規模感です。属人的な経験や技能を補うようなシステムづくりも進めていきますが、一方で職員一人一人や地域との信頼関係もしっかり築いていきたいと思っています。

 

野村:ご自身の将来像についても聞かせてください。

 

毛塚:今までの経験を踏まえて、自分にしかできないことを模索して行きたいです。大袈裟ですが、同世代というか時代に対する責任感を感じている部分もありますし、一人では動かせないけれど、自分にしかできないことを担う形でみんなと協働できるはず。

時代を作れるというのは本当に幸せでやりがいのあることだと日々感じています。財務省の採用面接で、「本質的に何をやりたいか」を聞かれて、「時代を進める仕事をする」と答えましたが、副市長就任後の最初の市議会でも実は同じことを言いました。

東市長が野村くんとの対談で話していた選挙の話は本当によくわかって、自分が背負っている責任の重さについても自覚があるつもりです。僕らの世代でもインフルエンサー的に目立ち始めてきた人も増えていますが、そろそろ結果が伴ってこないとダメな時期だとも感じてもいます。

ちなみに、野村くんのことは大学1年の頃から知っていましたが、当時非常にギラギラしていて、狂犬みたいでした(笑)。どういう心境の変化があったのでしょうか。

 

野村:狂犬のようだったとはすごい頻度で言われます(笑)。すでに準備してしまっている回答になりますが、生い立ち、金、英語、経歴、といったコンプレックスが解消されていったのが大きいのだろうと思います。この類のものが無くなったら、攻撃する必要も牙を剝く必要も無くなってきた。あとは、言葉にすると陳腐ですが、人生は思考力や論理力の類だけの勝負ではないということが、身に沁みてよくわかる経験を数多く得られました。

 

毛塚:わかります。少年ジャンプ的な戦いから抜け出せた、みたいな(笑)。模擬国連も京論壇も、英語でロジック立てて主張することが求められていたのですが、それらを経験した結果、これだけじゃダメだな、と。

 

野村:このご時世、外部に敵を設定して戦ったら負けだなって。毛塚くんは何かコンプレックスは残っていますか?

 

毛塚:僕も栃木の田舎から出てきて似たようなことを感じてきましたが、いまはコンプレックスを尋ねられても思いつかないぐらいには薄まってきました。

むしろ今の立場にいる者として、ちゃんと成果を出していく、地域を背負っていく、ということへのプレッシャーを感じています。もう少し長期的に見れば、こういう機会をもらえた責任をしっかり果たしていくということ。

 

野村:とても健全な自負だと感じます。決して一般論に回収する趣旨ではないのですが、やはり「役は人を作る」は真だなぁと。

本日はありがとうございました。【了】冒頭に戻る

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