自治体から時代を進める
〜全国最年少副市長の挑戦〜③

毛塚幹人(27):

宇都宮大学教育学部附属中学、宇都宮高校、東京大学法学部を経て財務省入省。G20関連業務、近畿財務局出向、税制改正関連業務に携わったのち、つくば市副市長に就任、全国最年少副市長となる。"アジャイル行政"のコンセプトの下、全国各自治体のモデルとなる取組を多数推進している。

ケンブリッジ大学で開催された

模擬国連世界大会に出場

毛塚:大学入学時は本当にカルチャーショックを受けました。僕自身は田舎育ちで海外にさえ行ったことがなかった中、高校から海外で活動していたりする人も大勢いて。一方で、経済的に余裕があるわけでもないので、自分のお金で海外渡航ができなかったんですね。それで、全米大会への代表に選出されれば1ヶ月程度米国に滞在できるということもあって、模擬国連に加入して初めて米国へ行ったりしました。また、京論壇で副代表を務めたり、開発経済の授業でフィリピンに行ったり。自費で海外にでたことはほとんどありません。

 

野村:本当によくわかります。いまは当時よりかなり変わってきている印象ですが、海外にいく往復渡航費と滞在費の30万が自分で捻出できず、機会損失を考えるにつけて悔しく感じていました。

それにしても、先日World Economic Forumの幹部をつくば市にお連れした際にも流暢な英語を話せていたのは、こういう背景があったのですね。僕の方で即時通訳するって事前に伝えていたら、普通に英語でプレゼンいただいて。その節はどうもありがとうございました。

 

毛塚:英語を話すのはあれが1年ぶりでした(笑)模擬国連や京論壇のほかにも、川人ゼミ(弁護士とともに法と人権を考えるゼミ、100人を超える学内最大規模)の学生責任者を務めていました。フィールドワークで現場の課題に直接接して非常に多くの学びを頂きましたが、一方でそこで終わってしまってはいけないということも感じていて。共感して理解してそこで終わり、ということではなくて、社会のシステムや制度面で改善していきたいと思い、官僚や政治により強い関心を持つようになっていきます。

 

野村:これもすごくよくわかります。どちらがいいとか悪いとかではなく、どうしても、個別具体の情景や物語に引っ張られやすい面がある。

 

毛塚:あとは、どんなコミュニティに貢献したいかという話もあると感じています。突き詰めると最後は、自分がどこに愛着を持てるのか、という話だろうと。ベネディクト・アンダーソンがいう「想像の共同体」ではないのですが、あくまで想像上でも、愛着を持てるのであればコミットすればいい。

 

野村:Imaginary communityといったときに、僕自身は愛国心や郷土愛を否定はしないのですが、その拠り所が何なのかを評価・判断するのが難しいと常々思います。東市長との話でも出したのですが、郷里や地元への愛着は、風景や人の表情が具体において刻まれているので否定できない気がするものの、その先、たとえば国家や民族ということになると、肯定・受容できるかは人によって違ってくる。その線引きを考えるには、実は一度国家行政に奉職するのもいいのではないかと振り返っても感じます。

学生時代から財務省志望一筋でしたか?

 

毛塚:大学時代の選挙事務所インターンもあって地方自治に関心があったため、総務省とも悩みました。一方で、総務省は自治行政のプロフェッショナル集団だからこそ、同じ関心を持つ自分が付加価値を出すには違う視点を持っていたほうがいいと思い、税や社会保障を含めたマクロな財政を担う財務省を選びました。また、財務相は尖った人や一芸を有しいている人を尊重する文化があり、そこも好きなところです。

野村:たしかに。我らがK君(開成高校で学長表彰を受賞して卒業後、東大法学部に進み、国家公務員試験に首席で合格して財務省へ。毛塚くんの同期で野村の大学時代のクラスメート)はじめ、ああいった人材を有して伸ばしていけるのは、やはり財務省の器量と矜持だなぁと。最初の配属先はどちらでしたか?

 

毛塚:国際機構課というG20会議を担当する部署でした。学生時代の模擬国連や京論壇といった活動と地続きです。当時のG20では金融危機をテーマとして扱っており、ギリシアやウクライナの経済危機に世界としてどのように対応していくかということが議題に上がっていました。ギリシアの財政規模は日本でいうと都道府県程度、ウクライナは基礎自治体程度です。そして、ウクライナが破綻しようとしている最中、ウクライナの国債の過半数は米国の一ファンドが戦略的に保有していた。

 

野村:ウクライナ国債の話は僕も初耳です。

 

毛塚:それで、ある国が財政破綻するとIMFなどが救済措置を採るわけですが、こういったファンドはそのタイミングでの債権価値向上を狙っている。

 

野村:なるほど、アルゼンチンの例と近しい構図ですね。

 

毛塚:そのとおりです。「自治体程度の規模であれば、ファンド一個の力で買えてしまうんだな」と痛切に思い知りました。しかも、国債はデフォルトしますが、日本の自治体は現行制度では最終的には潰れない。その一方で、海外のファンドがほぼ自由に債権を買える。利回りも国債より高い。今のところは地方銀行が地方債の多くを保有していますが、地方銀行の体力が本格的に弱まってくると、いまお話ししたようなマーケットが本当に成立してしまう。顕在化していませんが、理論上は可能なわけです。

 

野村:近年急速に人気になったリゾート地なんかでもあり得る話ですね。

 

毛塚:まさに。いまは地方債の話をしましたが、土地を買う、地域の影響力の強い会社を買う、といったことで実質的に支配することもできるなぁと。

 

野村:経産省時代に外為法の運用を担当していたのですが、外為法は対内直接投資の審査もしています。大量破壊兵器の開発に転用し得る技術や物資が特定の国や団体・個人に流出しないように規制が敷かれているのですが、今の話の関連で極論を言えば、地元の地権者に金銭を渡して土地ごと譲渡させるとか、日本国内の法人を買うなり大株主になるなりしてその法人に土地取得をさせるとかは、理論上は可能だなぁと。

 

毛塚:そうです。極論、自治体そのものが買えなくても、実質的に影響力を行使できてしまう。

 

野村:こういった視座のお話を聞くにつけて、やはり財務省での経験が糧になっていらっしゃることを感じます。