自治体から時代を進める
〜全国最年少副市長の挑戦〜①
毛塚幹人(27):
宇都宮大学教育学部附属中学、宇都宮高校、東京大学法学部を経て財務省入省。G20関連業務、近畿財務局出向、税制改正関連業務に携わったのち、つくば市副市長に就任、全国最年少副市長となる。"アジャイル行政"のコンセプトの下、全国各自治体のモデルとなる取組を多数推進している。

野村:現在はつくば市の副市長を務められている毛塚くんですが、きっかけは学生時代につくば市長選を手伝われたことだと記憶しています。
毛塚: もともと社会のシステム作りに関心があって、政治・行政の道に進むことを考えていたのですが、一度官僚になってしまうと個別の政治現場に入ってお手伝いすることができなくなると分かっていたので、大学3年のときにリアルな現場に飛び込んでみることにしました。
選挙のお手伝いと言ってもチラシを配って終わりといったものではなく、選挙戦略やマニフェストを具体的に考案するといったことをやりたくて、全国色々調べた結果、当時つくば市議会議員だった五十嵐現市長が学生を含めた幅広い世代で選挙をやろうと考えていることを知って、面識もない状態で「住み込みでやらせてください」とメールし、学生チームのリーダーとして一緒に選挙戦を戦わせてもらいました。
これまでキャリア選択に迷ったときには、仮説を立てて検証するという形を採ってきました。「この仕事はきっとこういうものだろう」と思い続けても、理解は深まっていきません。悩むのであれば現場に入って実際に体感し、細部まで分かってから決定する方がいいと考えています。
野村:強く同意です。仮説を立てるまでは多くの人がなんとなくやっているのですが、実際に具体で着手しないと見えてこない世界があるわけで、リアリティも得られない。一歩踏み込むだけではなく、二歩、三歩と進んで全体構造とクリティカルイシューを掴まないと、適性も判断できないなぁと。
ちなみに、キャリア決定における仮説検証の重要性についてはいつから考えていましたか?
毛塚:高校以前からですね。正直、僕のキャリアイメージはコロコロ変わってきたように見えます。高校時代は理系で研究者を目指していましたが高校3年時に文転して東大を受験、東大入学後は栃木の田舎から出てきて海外に興味があったので模擬国連の全米大会や京論壇(東大と北京大の討論会)に参加したり、フィリピンのスラムに滞在などもしていました。国際社会の中での日本を見つめている中で国内の仕組みからいかに抜本的に変えていくかに関心が移り五十嵐候補の選挙のお手伝い、卒業後は財務省でG20や税制改正、そして結局地方行政。
一見して発散気味ですが(笑)、それぞれを自分なりに突き詰めて中身をしっかり見て仮説検証しているので、ジグザグのようで真っ直ぐ進んできた感覚です。ジョブズの言うconnecting dotsではありませんが、今思えば、突き詰めたからこそ後からすべてが繋がってきたと感じています。今は地方行政を行なっていますが、研究者を目指したかつての経験は研究学園都市つくばのポテンシャルを活かす科学技術政策に繋がっていますし、海外経験は国際都市でもあるつくばの対外発信や交渉事に活かされています。
野村:どういった家庭環境・教育環境で育ってきましたか?
毛塚:母は小学校の教師、父は県庁の土木系一般職で、県庁職員になってから働きながら夜学で大学に行かせてもらった人でした。親に勉強しろとは言われたことはなく、鬼怒川で日々魚を獲って遊んでいたような小学校時代でした。当時は受験して入学する中学があるとも知りませんでしたが、担任の先生に国立の宇都宮大学教育学部附属中学の受験を勧めてもらい、宇都宮の街中へ進出します。本当に自転車で片道1時間かけて中学に通ってました。
野村:公共心や責任感は、親御さんの影響もおありでしょうか?