映画界のテスラと呼ばれる
起業家・科学者・芸術家​①

木ノ内輝(30):

米国のリベラルアーツカレッジWashington and Lee Universityを芸術・生命科学の両専攻で卒業後、ハーバード大・タフツ大の医学大学院で研究助手として研究活動に従事。ハーバード大学研究室在籍中にプロデューサーを務めた作品でボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞を受賞。以降、映画制作・配給会社Tokyo New Cinema代表取締役として作品の制作総指揮を担い、東京国際映画祭2年連続入選、モスクワ国際映画祭国際批評家連盟賞・ロシア映画批評家連盟特別表彰のダブル受賞。

野村:輝さんとは国際文化会館主催「新渡戸国際塾」でご一緒して以来の仲ですが、実はお仕事の話はあまりしてこなかったので、ぜひこの機会に詳しく教えてください。

 

木ノ内:私の仕事は世間的に言えば映画プロデューサーですが、自分ではむしろアントレプレナー、起業家だと考えています。私は起業家の本懐を「社会変革をもたらし、今までの常識に囚われない新しい価値観を作ること」と捉えており、以前、ハフポストで取材を受けた際にも、「映画界のテスラ・モーターズのような会社を目指したい」と答えました。映画業界も自動車業界のように、大きな会社が長年に及んで影響力を持っています。

 

野村:参入できない前提で避けるのではなく、正面突破していく。

 

木ノ内:そういったイメージです。両業界ともに資本、人脈と経験が命なので、なかなか新規参入が難しかったのですが、今の時代なら不可能ではないと思って踏み出しました。従来の映画製作の基本的な考え方は、「大きなコストを費やして、大きく成功するか大きく失敗するかのいずれか」だったのですが、ひとつひとつコストを抑え生産しつつきちんと収益を上げていくこともできるのではないかと。実際、現在のTokyo New Cinemaではそれが成功しています。

世界全体で見ると映画は成長産業で、過去10年間で約2倍に成長しており、今後も成長を続けるだろうと言われています。中でも成長著しいのがアジア。もともと日本の映画は世界の中でもプレゼンス(存在感)があった方なのですが、どうしても国内向け中心なのがもったいないと思い、東京から世界に羽ばたく映画を作るべく、今の会社を立ち上げました。

創設当初はそれこそ映画一本あたり数十万円、数百万円の資金から撮り始め、いまは数千万円単位になってきています。また、一般的には映画一本を撮るのに監督一人が2,3年かけるのですが、我々の会社では一人の監督が年間2本を作るなどしています。

野村:「カメラを止めるな!」も好きなのですが、輝さんの会社の映画の方が個人的には好きです。音や描写、つまり色彩だとか角度だとかのこだわりが全然違う。「カメラを止めるな!」は、いわば脚本勝ちだなって。

 

木ノ内:「カメラを止めるな!」はアイデアも面白いし、自分も面白いと思ったのですが、作品として求めているところが違うかもしれません。我々は社会の問題を反映しつつ、人間のドラマにフォーカスを当てているつもりです。

野村:話が脱線しますが、僕がこの「若者の哲学」を主宰する中で友人たちと話すときは、意識的ないし無意識的に話を整理しに行きがちです。他方で輝さんについては、世界観が広すぎて、理路整然と構造を整理しにいくのではなくて、聞きながらエラボレート(拡張)したいという。こんな人なかなかいません(笑)

保育園から中学までは公立で、高校から米国に行かれたのでしたっけ。