公(パブリック)であること
〜全国最年少市長の挑戦〜
【前編】④

東修平(30):

四條畷高校、京都大学、同大学院(原子核工学専攻)を経て、事務官キャリアとして外務省入省。環太平洋経済連携協定など貿易協定締結の対外交渉に携わる。その後、野村総合研究所インド現地法人で自動車業界のコンサルティングに従事。2017年1月の四條畷市長選挙に無所属出馬し、現職を破り当選。全国最年少市長となる。公民連携による迅速な事業展開を図るとともに、市民との対話を徹底的に重視した地域主体のまちづくりに取り組む。

野村:まさに、実学と形而上学の接続ですね。そしてそのあとの博士課程に進むとと、さらにその先、自ら理論の仮説や問いを立てる世界かと。

 

東:外務省時代の先輩で入省前に物理をやっていた方がいて、入省後、オックスフォードの大学院でカント哲学を学ばれたんですね。その方が仰っていたのは、物理は突き詰めると哲学にたどり着く。逆も然り。片方に詳しい人はいるけど、両方に詳しい人は全然いない、と。哲学的なものと数学的なものの両方。

 

野村:僕もあくまで概念的には今のお話が理解できる程度ですが、日本でも基礎研究で頑張る若者がもっと増えていくといいと心底思います。どうしても試験の点数に目がいってしまいがちですが、大学入学後はどうでもいいのではないかと。その人の学問関心やコンピテンシーが何かみたいな議論を曇らせてしまいます。特に東大は本当にもったいないです。

ちなみに、超思いつきなのですが、公立高校で一芸入試を導入するというのはどうでしょうか?でも府立高校だから市の一存では決められないか。中学校の学区を外すのはどうでしょう?                                           

東:特定の学校に進学希望者が集中して、クラス数が偏ってしまいます。公立小中学校の教員は府の権限で教員を措置しているので、地域ごとの偏りに毎年対応することはあまり現実的ではありません。実際、府教育委員会と市教育委員会の連動性はとても大事な課題です。

また、たとえば後期高齢者医療も、財布を掌握しているのが府で、健康施策の運用が市という構図になっていますが、財布と運用がずれているため、一自治体で様々な取組を進めても結果的には負担が全自治体に按分されてしまうのが現状です。

 

野村:こういう現状下で、国・自治体の別を問わず職員が疲弊し続けている面もあると思います。

 

東:正直な話、僕も公務員時代は1週間1度も笑わないような時期もありました。いまはありがたいことに意思決定者という立場で自ら課題や締切を設定させてもらえています。見える世界も大きく変わりました。

 

野村:そういう立場になると、責任も重大ですが、自身への負荷も合理的に受容できるのではないかと思います。

 

東:民主主義における愛すべきコストというものがあると思います。野村君は感性豊かながら意思決定や行動は相当に合理的ですが、この点はどう思いますか?

 

野村:民主主義は一切否定しません。というのも、それ以上の社会制度が今の僕には全く浮かばない。哲人政治みたいなものは永続性がないというか、担保し得ないのではないかと。

 

東:僕も自分が哲人だとは決して言いませんが、将来的に僕ではない人が四條畷市長になったとしても悪い方向には進んでいかないように、と考えながら制度改革に着手しています。たとえば、補助金を1つの例外もなく可視化して、新たな補助金を設けるには市長決裁以外のプロセスを必須にするなど。

 

野村:心から素晴らしい話だと思いますし、東市長の根幹なのだろうとも思います。正義感。言葉を変えれば、客観的な正論と言うと語弊がありますが、哲学や物理学が拠り所にしている何か。

 

東:そうです。これが是だ、というものを追求していく。いま、是ではない使途に使われている予算を健全化すれば、新たに使える予算が生まれてきます。その予算を、まだ対応できていない人たちのために使って救う。正せば救えるんです。これはもう、やらざるを得ない。

 

野村:自燃型か他燃型か、という話もあるとは思います。東市長はストーリーも含めて自燃型だと感じます。他方、半ば無関心層も存在している中、できることなら他燃型へと感化していく社会設計も必要と思います。

 

東:「若者の哲学」で対談されている同世代のパブリックマインド(公共心)も多様で面白いです。今後も30代半ばまでの方との対談を掲載されていくのだと思いますが、まさに、まだ「自分が何者になるか」というところに至っていないフェーズ。40歳ぐらいには、もう大方確立されているような印象です。

 

野村:まさにその通りです。20代半ばから30代半ばまでは、自身や社会の輪郭が何となく見えてきたかな、といったところ。だからこそ、そこに焦点を当てる意味で「若者」の「哲学」と冠しています。

 

東:いわゆる若者世代の横のつながりを、もっと広げ、強くしていく必要性を日々感じています。いまは一部の政治家や学者に頼りすぎてしまっているのではないかと。