公(パブリック)であること
〜全国最年少市長の挑戦〜
【前編】③

東修平(30):

四條畷高校、京都大学、同大学院(原子核工学専攻)を経て、事務官キャリアとして外務省入省。環太平洋経済連携協定など貿易協定締結の対外交渉に携わる。その後、野村総合研究所インド現地法人で自動車業界のコンサルティングに従事。2017年1月の四條畷市長選挙に無所属出馬し、現職を破り当選。全国最年少市長となる。公民連携による迅速な事業展開を図るとともに、市民との対話を徹底的に重視した地域主体のまちづくりに取り組む。

東:面接の過程で、「51:49で勝つ」という美学を説かれたことが本当に印象的でした。相手が負けたと思ったら、いつか報復がくる。もちろん、外交自体も好きだし関心もあったのですが。

あとは、選考自体も面白くて、グループディスカッションで文化外交がテーマだったのですが、M君(東市長、野村と同期の外務官僚)がずっと「大事なのはマネーっすよ」と言い続けてたんですね。

 

野村:それは本心ではなくポジショニングですよね。明らかに。

 

東:そう思います。外務省は論破することよりも、相手の意見や考えを発展させたり、新たな視点を提供したりすることを重視します。実際に、M君がマネーと言い続けたことで、議論が広がりを持った。もちろん、相手の意見に乗るだけでもだめです。これは印象的でした。

 

野村:そのポジショニングは、自信が無いと取れませんよね、個々の能力とキャラクターを重視する経済産業省と対比しても面白いです。

入省後は経済協定に従事されていました。

 

東:僕の入省は日豪経済連携協定の締結が決まったタイミングでした。野村君には語る間でもないですが、本当に大変な仕事でした(笑)。

 

野村:もう、自分が何をやっているのかもわからず、かつそれを理解するために費やせる時間すら取れませんでした(笑)。ともかく必死。

でも、5月の人事院研修(人事院主催の5週間に及ぶ研修。その年に入省した各省庁の官僚を150人程度のグループに分け、寝食をともにさせる)は楽しかったですね。他省庁の同期でいい友人もたくさん得られました。入省前から「次官」と呼ばれていた厚労省のN君など(笑)。僕も彼とは経産省と厚労省という省庁の垣根を越えて幾度も一緒に仕事しました。

 

東:最高でしたね。僕もN君は大好きです。しかも、厚労省に入省しながら異動先の部署でずっと経産省と仕事をするという(笑)。

研修中は、狭い小部屋に10人ほどが集まって夜中に本気で議論を重ねましたね。

 

野村:閉鎖的でした(笑)。でも、そういった濃度の高いコミュニティを形成して持続・発展させていくことが自分の資質だとも思いつつ。

時折、そういったコミュニティを作ることが傲慢だとか排他的だとかいう批判も受けるのですが、僕はその視座自体も傲慢で排他的ではないかと感じます。開かれた議論を否定するものでは決してなく、そういう閉鎖的なものも肯定・受容していいのではないかと。米国もあれだけ自由を掲げていますが、学閥や社交クラブ・サロン文化は相当根強いわけですし、だからこそ逆説的に多様性が担保されてくる。

東:嫉妬もあるのかもしれませんね。

 

野村:やはり誰しも、自分のコンプレックスを他人に反映するという部分があって。その類のものを刺激しないようにするか、もう突き抜けるしかないなと。どちらも試行錯誤していますが、自身の哲学というかスタンスを再確認・再定義するプロセスでもあります。誰に訴求するかということ自体も、とても大事な点です。

 

東:あまり人には話しませんが、僕も時折、あまりに悔しいために拳を握りしめる力が強くなりすぎて、爪が食い込んでしまい、手のひらが真っ赤になることもあります。

 

野村:そんなこと、全然見せませんよね。それも、いわば社会的な理不尽さへの憤りなのでしょう。その境地にいるということが本当にすごいです。

研修の話でしたね。各省庁ごとに代表を出す形で、スマブラ(Nintendo 64の格闘ゲーム、世界累計550万本の売り上げ)でトーナメント対抗戦を開催しました。たしか、懇親会で最初に対戦したときは僕が負けて、研修最終日の各省庁対抗戦の決勝ではなんとか僕が勝ちました(笑)。

 

東:野村君がスクリーンを準備して、超騒ぎましたね(笑)。僕らの決勝は、お互い技を出すことなくひたすら間合いの読み合いを続けて、他の人たちから見ると何をやってるかわからなかったことでしょう(笑)。

 

野村:まさしく剣道の高段者同士の試合のようです(笑)。

 

東:各省庁対抗戦は5週間研修の最終日の懇親会のメインイベントでしたが、実は裏話があって、みんな最後の晩だと親交深めている中、僕だけ別の部屋で仮眠を取って整えていました(笑)。もはや省庁対抗だということを越えて、脳全体を万全の状態に持っていくために、最後の交流の時間をほぼ全て捨てるという(笑)。

 

野村:なんと(笑)。僕も幹事だったので乾杯やら来賓の対応やらしていましたが、ずっと指を回して関節を温めていました(笑)。文科省のT君も強かったですね。ちなみに、ちょうどさっき、国交省のKちゃんからFacebookで連絡が来ました。

そういえば、邦和さんとは会っていますか?

東:東京に来る度に会っていて、公私ともに色々と相談しています。昨年5月に東大の文化祭で登壇した面々は本当によかったですね。土雅君もまさにニュータイプです。彼と2分以上真面目に話せたことがありませんが(笑)。

 

野村:また同様の企画を開催しましょう。200-300人といった規模で、興味を持ってもらえた人に、まさに今日のこういった感じの話を聞いてもらう。講演料なんてもちろん要らなくて、場所とお酒があればそれでいいと思ってます。

 

東:話が飛びますが、物理や数学の突き抜けてる人って、本当に次元が違います。物理学における最初のふるいはシュレディンガー方程式で、あれを概念ではなくて数式で理解できるかどうかが一つの大きな壁です。僕はなんとか越えられましたが、京大の修士まで進む人の中でも1割、2割といった世界。